『サイゴン』を終えて…

新年を迎えて、すでにひと月が終わろうとしている今日この頃、みなさん、いかがお過ごしですか?

ご無沙汰をしてます、リオです。

僕はと言えば、つい一週間ほど前、愛知は名古屋の地で、無事に『ミス・サイゴン』大千穐楽の幕を降ろしてきました。

 

稽古をふくめると足がけ半年。

長い長い道のりだった。

暑い夏の8月、『三銃士』終わりで稽古に合流し(あの頃はジョニデもとい、アラミス仕様でまだ髪が長くて髭もあったな…)、

そこからサイゴンモードに突入していった。

稽古の序盤に毎回「サイゴンスクール」という、作品について考え、語り合い、シェアをしていく時間があるんだけど、そこで僕は

「この作品は、体力的にも精神的にもキツイ作品」とカンパニーに述べた。

そこから暑い夏を経て、10月に東京で幕を開け、冬になり、年を越し、そうして最後の日を迎えた。

3度目のジョンという男と共に戦う『サイゴン』だったが、今回は多くのお客さんから作品に対して「全然印象が違う」

「今まで嫌いな作品だったのに、今回はとても胸に迫って感動する」「みんな自分の正しいと思ったことをしてるのに、

こんな結末を迎えてしまう、そのことをすごく考えさせられる」といった、とても誠実で真摯なお言葉をたくさん頂いた。

ジョンに対しても「今まですごくイヤな奴に見えていて”偽善者”ってイメージだったのに、ジョンも悩んで苦しんだことがとても

伝わった」と、嬉しいお言葉を受けた。

有り難い。

きっとそれは、今回からカンパニーも一新され、演出家も代わって、新たにゼロからこの作品に向き合い、構築していく濃密な時間

が持てたからだと思う。

演出のJ.Pが言っていた。

「この作品は、一人一人がそれぞれの人物を、その役割を常に95%以上引き出し、舞台の上で1975〜1978年の時代を”生きる”こと

で、初めてこの『ミス・サイゴン』という一つの物語を、ようやく紡ぐことができる。それだけ繊細で非常にバランスを保つのが

難しい作品だ」と。

おそらく今回は、それが非常にうまくいったのだと思う。

逆を言えば、それには決して、役者個人のエゴや欲を注いではならない、作品の純度を穢してはいけない、ということなんだと

思う。

それがJ.Pが続けて言ってくれた言葉「Tell the story. Live the story. Be the story.」の真意だと思う。

そうやってこの作品を、お客さんみんなに届けることができたことを誇りに思う。

ようやく、本当の意味で「新演出版」の『サイゴン』を創り上げることができたと感じている。

悪いやつは誰もいない。

みんな、最善を尽くそうとした、そんな人たちの物語。

その中で僕にとってこの作品は、ジョンとして、実は非常に精神的にキツいものとなった。

東京千穐楽のカーテンコールで述べたのと同じ、”どうすれば良かったのか、何が正しかったのか”という想いだ。

2幕、バンコクでキムと対峙したその時から、キムが、サイゴンからバンコクにまで移って、最底辺と呼べる生活をしながらも、

3年もの間、一心にクリスを想い続け、しかも子どもを産み、育てている。

“いつかクリスが迎えに来て、親子揃ってアメリカで暮らせる”と信じて。

その想いに触れてから最後のシーンを迎える迄、特にホテルのシーンが終わった途端、なんともいえないやるせなさと、無力感に

襲われていた。

それには、今回強く感じて意識していた「人種の壁」もあった。

ジョンは、元来の設定が黒人。

自分の場合はプエルトリコ系アメリカ人(それでも当時のアメリカ社会での扱われ方は、やはり低かった)という導きがあったの

だが、でもだからこそ、彼が「ブイ・ドイ」と呼ばれる子どもたちを救おうと活動するのが腑に落ちる。

(それを知ってから観て欲しくて、公演期間中はあえてこのwordsのページは更新しなかった。)

そうした時にあのホテルのシーンの最後で、「あの親子をここに残して、お金だけ送って援助をしよう」という、おそらく白人の

クリス&エレン夫妻に「結局こいつらは差別される側の苦しみなんて分かってないんだ」という怒りがこみ上げ、なんとも抗えない

「壁」を感じて、やるせなくなっていた。

キムのクリスへの愛、エレンがクリスを支える愛、戦争がクリスにもたらした苦悩、トゥイの祖国とキムへの想い、戦争の是非…

いろんなメッセージがある作品だが、自分は今回、特に「差別」を感じた。

そうすることで、また違った見方ができるのだから、本当に不思議で面白いものだ、舞台とは。

“どうすれば良かったのか、何が正しかったのか”、それに対する答えは出ていない。

でも、そうして考え、悩むこと、それこそが「正解」なのではないかと思う。

考え、悩み苦しみ、過去を語り継いでいくことで、未来を創っていくことにつながると信じている。

そのせいか、大千穐楽の日、すべてのシーンが終わった瞬間、胸にぽっかりと穴が空いたような、何かズーンと重くなる感覚と、

「終わった…」という安堵感、解放感、脱力感に包まれた。

不思議な感覚だった…。

きっと、ここまで述べた想いと、今回は誰も怪我で欠けることなく、最後まで駆け抜けられたという想いがあったからだと思う。

そして、前にも書いた、市村さんとの約束も果たせたという想いも、かな。

本当に、本当に、良かった。

おかげで今も若干腑抜け気味だよ(笑)

 

さぁ、でも腑抜けてばかりもいられない。

今年もまたまた大忙し!

2月には、ついに始動するAdam’s。

3月は、宝塚の錚々たるOGのお姉様たちと共演させていただく『Sparkling Voice2』。

そしてそして!

その後は待ちに待った『Les Miserables』30周年記念公演が待っている。。

アンジョルラス、今年もよろしくな。愛してるぜ。

そして、たくさんの夢を見せるから、お楽しみに。

それでは、去年出逢った素敵な本からこの言葉で。

「足は大地に、理想は高く、心には愛を」

それでは、また劇場で。

Ciao!!

Rio


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